本田技研工業が4輪乗用車の生産を開始したのは1963年のことです。
DOHCバルブ機構、ローラーベアリング、4連CVキャブレター、そして、シャフトではなくチェーンでの後輪駆動など、まさに二輪のホンダならではの極めて独創的な機構が用いられていました。
S360に始まり、S500、S600と進化を遂げ、1965年末に最終形態のS800がデビューいたします。
1970年に惜しまれつつ"エス"シリーズは生産を完了することとなりますが、モナコのグレース王妃や、フェラーリのコレクターとして知られるフランスのピエール・バルディノン氏が所有するなど、世界的なエンスージアストからも極めて高い評価を得ているモデルです。

S800は生産時期によって複数タイプに分類されます。
デビュー当初はチェーン駆動でしたが、後期にはリジットアクスルへと変更されます。
更にその後は、フロントブレーキがドラムからディスクへと変更されます。
そして、1968年5月に最後のマイナーチェンジが行われてS800シリーズ最終形態のS800Mが誕生しました。

今回取材した車両はそのS800Mです。
S800Mはアメリカの安全基準に対応したモデルを国内向けに改めたもので、性能的には従来と変わりありませんが、ブレーキ油圧警告灯の新設、ブレーキランプ/サイドマーカーの大型化などが主な変更点となります。

実車は輸出向けに生産された左ハンドル仕様で、ドイツから日本へ里帰りした個体となります。
S800を捜し求めていた現オーナーさんが5年前に実車と出会い購入されました。
それ以前にレストアやエンジンOHが施された車両であり、購入時点では何の不具合もなく、そして、現在に至っても快適な状態が保たれています。

●車検証の主なデータは以下の通りです。
【初度登録年月】平成17年3月
【車台番号】群[46]5202群
【型式】-AS800-
【原動機の型式】AS800E
【備考欄】
［製作年月日］昭和43年12月
［シリアル番号］AS800-1005768

【外観】
車体の塗装には艶やかな光沢があり、目に留まるような傷やヘコミは見当たりません。
ホロも状態は良好です。そして、後部スクリーンは透明感があり視界も良好です。
左右フロントフェンダーとボンネットはFRP製です。
社外品のドアミラーです。（純正品フェンダーミラーあり）

【機関】
エンジンは短いクランキングで一発始動です。そして、吹け上がりはとても滑らかで、アイドリングも静かで安定しています。
まるでバイクのような、ストレス無く軽々と回るエンジンには驚かされます。
なお、エンジンは現オーナーさん以前にフルオーバーホールされており、オーバーサイズピストンが組まれて排気量は870cc位とのことです。
車検が2024年7月で切れましたが、それまで気持ちよく使用されていました。

オリジナルからの変更点はウォッシャータンクを取り付けている点です。
また、電動ファンの作動間隔を調整できるコントローラーを装備しています。（画像参照）

オドメーターの表示は「45758km」ですが、実走行を証明するすべが無いので不明扱いといたします。

【内装】
ウッド製のステアリング、レカロ製のシートに変更されています。
ダッシュボードに割れもなく、内装全体が状態が良好だと感じました。

以下のパーツを屋内保管中です。
・純正ボンネット
・ハードトップ
・トランクキャリア、革製ケース
・純正シート左右
・純正ドアミラー
・シートベルト

オーナー様は複数台のエンスー車を所有されており、今回は車庫整理のために手放されるそうで、代わりに大切にしてくださる方を探されています。

個人のため消費税は不要です。
リサイクル料と令和7年度自動車税はオーナー様のご厚意でサービスといたします。

実車は宮城県亘理郡にあります。