ーデザインは文化の鏡ー
このワードはデザインや美術の分野で広く共有されている思想や理念として表現されることがある。
つまりデザインやアートは文化を映し出すと言うこと、そこには哲学や価値観、社会の空気感までも反映されるもので、仮にそれが奇抜すぎてもその時代と向き合い対話がなされたものであり、失敗作とくくるのはふさわしい表現ではなくなる。
「時代を先取りしすぎた」「時代が追いついていなかった」これらはその奇抜さ故よい評され方をされなかったクルマたちに向けられることがあるが、デザインにおける文化は、時代にも大きく影響し合うのがわかる表現であり、良し悪しと言う個人的な好みとは一致しないものであるのも自動車デザインの興味深いところでもある。
その奇抜さの代表格とも言えるのがこの「ムルティプラ」
確かに酷評を多く聞くモデルである。特に前期モデルは「世界一醜い」「昆虫のよう」と揶揄されることもしばしば。しかし、それが魅力でもある。
前述のようにデザインは文化を写すものであり、自動車でありながらも美術、建築、ポップカルチャーの分野にまでに波紋を及ぼし、良し悪しの評価軸が綺麗に分かれるのも、このデザインで生まれてきたことの意味深さを知るところである。
酷評については終いにして、このデザインの文化的な評価と言うべきエピソードをひとつ。
代表的なのは1999年にMoMA(ニューヨーク近代美術館)での展示実績が挙げられよう。
ここでの自動車の展示は過去にも少ないようで、ムルティプラにおいてはデザインとは他に「機能が形を規定する」と言う建築的なアプローチが評価されたとある。
だから、ムルティプラは決して醜くくない、MoMAが選んだ奇才の名をほしいままに、時代に新風を吹き込むデザインと優れた機能を併せ持つ、極めて未来的な日常車である。
そんな時代を先取りしたムルティプラをじっくりと見ていきましょう。
コンセプトカーがそのままプロダクションカーに、それが体現されたかのような姿を目の前にすると、類を見ないインパクトの強さです。よくこれを世に放ったなぁと言わしめる、強烈さ、鮮烈さは絶大です。
ボディカラーはカナリアブルーメタリック、明るくポップなイメージに映ります。ボンネットにわずかな飛び石と若干の小傷があるのを除けば艶やかで、独特のデザインを損なわない状態にあります。
ドアノブは4箇所とも新品に交換されており、ヤレの少ない外装に貢献しています。ただ、ホイールカバーには塗装の剥げがあります。これはいっそ外してしまって黒の鉄チンのスタイルも悪くないです。タイヤは現在スタッドレスですが、ホイール付きの夏タイヤがありますのでお付けいたします。
外観のデザインに目を奪われがちなムルティプラですが、インテリアに目を移せば、その思想を感じることができます。それは建築的なアプローチからくる視認性、開放感、使い勝手、これらが高次元で融合されている、と言うものです。革新的とも言える前後ともレイアウトを同じくする、いわゆる3+3で配されたシートは大人6人が乗れる全席独立型の構造、これらはユーザーを中心に置く実用性への追求の象徴的なものです。前後ともセンターシートのバックレストを前に倒せばテーブルになるのは、実用性に加え独自性にも通ずるアクション、また後席を取り外せば商用バンのごとく、大容量なラゲッジスペースが確保されます。運転席の生地に多少のスレが見られましたが、以外は問題なし。ただし前席のセンターシートのバックレストがロックしてしまったようで、レバーを引いても倒れない状態です。
色使いやレイアウトがSFチックであり、ポップカルチャーの雰囲気もあり、それをいち早く理解するのはダッシュボードに目をやった時でしょう、そこに富む実用性が加わります。
そのほとんどがセンターに配されており、左右のどちらからでも操作が可能、スイッチやツマミも丸型、遊び心が加わって、見た目で気分が上がるのは間違いないところ、しかし、それらに触れた時に気になることがあるとすれば、同時期の欧州車によくあるベタつき問題でしょう。それはすでに対策済みとのことで、実際に触れてみればその懸念は払拭されます。
ダッシュ上面には蓋つきの小物入れが2箇所あり、これは非常に便利だそうです。カーペットもキレイが保たれており、前後のフロアにはKAROのマットが敷かれています。
内装における不具合としては、大きさに耐えかねてしまったのでしょうか、助手席のサンバイザーが自然と下りてきてしまうそうで、現在は固定しており使用不可となっています。
他にはドアハンドル等の樹脂類にヤレが見られる部分もありますが、気になる臭いもなく、広く個性的な車内は快適に過ごせることでしょう。
1600ccのガソリンエンジンは、見た目やパッケージの奇抜さに対ししっかり者のイメージです。素直で実用的、ただ回して楽しいフィーリングはイタ車に乗っているのを忘れさせない仕様です。これまでノントラブル、メンテとしては車検整備くらいで、予防的に燃料ポンプを交換した以外には大きな修理を必要としていない状態を維持しています。
整備記録簿は前オーナーが新車で購入した当初のものから保管されています。
ここでオーナー様からムルティプラのメンテに大変有用なショップの情報をいただきました。
ゼロクラブ https://zero-club.jp/
いわゆる中古パーツ屋さんですが、内外装・機関まで在庫も見やすくなっているので、ネオクライタ・フラ車のオーナーには心強いことでしょう。
実用車として気になるポイントのひとつ、エアコンはしっかり効きます。取材日は夏日の気温でしたが、アイドリングの状態でも冷えていましたので、ファミリーユースではうれしいポイント。
操作系や吹出口の形状が個性的でありながら、直感的な操作ができるのもデザインと機能を融合を垣間見るところです。
オリジナルのラジオ・CDは動作します。また床置きのBluetoothスピーカーもお付けします。
後付けのリモコンキーもあります。ETCとドラレコも備わります。
ここからはオーナー様のこのムルティプラについての評を少しばかり。
お話をうかがった際に第一に驚いたのは、なんとオーナー様はムルティプラをこちらを含め5台所有したことがあるのだそう。
ボディカラーが白→赤→黄→シルバー→青の順で乗り継いできたそうです。だとすればオーナー様はムルティプラの大ベテラン、流通量からするにクルマも希少ながら、それを複数台所有していたオーナー様も希少です。
果たしてそこまでムルティプラに思いを傾ける理由とは、返ってきた言葉はやはりデザインと空間の広さでした。
当然同じモデルですので魅力自体は共通ではありますが、それでも個体差がかなりあったそうで、内外装の状態もさることながら、特に走行フィーリングの違いは顕著であったようです。
クルマである以上は走らせている時こそ快適でありたい、剛性感、安定感、滑らかさ、しなやかさ、一体感、それは視覚ではなく体感であり、何台も所有して、乗ってきて、初めてわかることです。
ここまで言えばお分かりかと思いますが、つまりそのフィーリングがこのプルティプラは頭抜けていると言う評価をされています。もちろん内外装においても状態はいいそうですが、飛び抜けた個性を長く、安心して味わいたいのを前提とすれば、走りのよさを特筆しているベテランオーナーならではの見解は、コンディション重視で選ぶ方には非常に心強さを感じるところでしょう。
よさがわかるのは悪い状態を知っているからこそ、それを踏まえ上でこのムルティプラを「極上と思う」と言い切るのは、なんとも説得力がありました。
極上と評したムルティプラをご好意により少しばかり運転させていただきました。
筆者もかねてより興味のあったモデルでしたが、無遠慮に見るのはもちろん乗るのもお初です。印象はと言うと、ポップ、カラフル、奇抜、まずは視覚から入力されたこれらのワードで一気に気分が上がりました。ある意味刺激的、はたまたアート作品工芸品を笑顔で楽しむかのような感覚を覚えます。
奇抜なルックスを存分に堪能したら今度は車内に、ここからはポップでカラフルな造形が展開され、さらに気分が上がるのを自覚することに。独立3列シートの前席、横に広いフロントガラス、デザインされた空間、そこはクルマの中でありながらもはやシアター、フロントガラスはさながら映画のスクリーンかのよう、ここから見る日常の光景もドラマチックに映るのではないかと思わせます。
どことなくファンタジーを感じながら、そろそろと走ってみます。クラッチを踏んでギアを入れ、アクセルを踏み込む、一連のクルマの運転の動作ですが、やはり目に映る横長のフロントガラスの光景は、新鮮かつ斬新です。頭の中では長さ4mのクルマ、しかし、あれっとなるのは少し幅の狭い路地を通る時、広い車幅は気を使う反面、あぁこれがムルティプラなんだって実感する時なのです。
ワイドトレッド、ショートホイールベースの四角い恩恵は、身のこなしのよさに効果を見せてきます。乗り心地は決して硬くはない、むしろしなやかな印象。操作系も軽く、エンジンは実用域でも扱いやすい、ところからのぶん回して、シフトして、それを元気に応えてくれる、デザインのみならず走りの楽しさをしっかり盛り込んでくる辺りは、イタリア車としての面目が保たれています。
感想は、極めた個性を普段から味わえる唯一無二の実用車でした。
売却理由は買い換えのためとの事、前述のようにオーナー様はここまで手にしては放し手にしては放しを繰り返しています。これを個性が強い=飽きるのも早いと想像するのは尚早、濃厚な味わいは感覚に刻まれ、また欲してしまうものです。また放したらその味を求め手にしてしまうかも、そんな心境になるのもムルティプラの飛び抜けた個性によるものかもしれません。
ムルティプラはイタリア語は「多様な」「多目的な」の意味、つまりファミリーカーです。家族が増えたらどうしても広さが欲しい、けど巷に溢れるミニバンには抵抗がある輸入車好きな方は少なからずおられることでしょう。そんな方にはヨーロッパ流、イタリア流、フィアット流、それぞれのセンスと味わいが加わり、日常を非日常と化すことが叶うクルマとしてムルティプラは刺さる存在ではないでしょうか。
さて、これからご家族へこの魅力のアピールを始めるとしましょうか。
コンディション上々な「フィアット ムルティプラ」は長野県軽井沢町にあります。
個人間売買のため、消費税や諸費用等はかかりません。
本車両は購入に際しては、自動車税の月割り精算並びに、リサイクル預託金(18,160円)のご負担をお願いいたします。
【お問い合わせに際して】
このページの車両は、クルマの個人売買情報サイト「エンスーの杜」に掲載されたものです。
エンスーの杜は自動車販売店では無く、広告代理店であり掲載車両は個人所有の物で、オーナー様のご依頼により取材を行ったものをFOR SALEとして掲載しています。
過去の整備記録や修理歴など含めて現オーナー様が把握している範囲でのコメントと事故歴の有無含めて取材しております。
この中にはオーナー様が知り得ない事柄もあり、またエンスーの杜でその裏付けをとったものではないため、コンディションや走行状況も担当者の主観によるものです。
本記事は2025年4月29日現在の状態を掲載しております。それから時間の経過とともに写真や記事の内容に変化が生じる場合がございますことをご承知おきください。
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