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メルセデス・ベンツ190SLの美しい姿を精巧に再現
幻のクラフトカーをご紹介します
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BMW Z3をベースに、メルセデス・ベンツ190SLの美しい姿を精巧に再現した
「デュッセン バイエルン マイスター」。
わずか60台ほどしか作られなかった幻のクラフトカーです。
今回ご紹介するのは、ワンオーナー(ワンメカニック)・
左ハンドル・3000cc直6搭載車という特別な個体。
現オーナーさんは新車時から大切に維持されてきましたが、
旧車を愛する方に次代を託したいとの思いで、
「エンスーの杜」に掲載されることになりました。
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300SLと190SLの物語から
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190SLを語る上で欠かせないのが、300SLの存在です。
1952年、世界で最も苛酷な公道レースといわれた「カレラ・パナメリカーナ・メヒコ」で、
メルセデス・ベンツが投入したプロトタイプレーサー(W194)が大活躍。
後に市販化されたのが300SL(W198)でした。
1954年ニューヨーク国際オートショーで発表された300SLは、当初アメリカ輸入元のマックス・ホフマンが「1000台の注文を約束」したことで量産が決定。
結果的にはクーペ1,400台(1954–57)+ロードスター1,858台(1957–63)=計3,258台が生産されました。最高速は260km/hに達し、当時の最速級ロードカーでした。
その伝説を彩ったのは、性能だけでなくオーナーの顔ぶれでもあります。
世界では、ソフィア・ローレン、クラーク・ゲーブル、ファン・マヌエル・ファンジオ(メルセデスから贈呈)、大富豪アリスティッド・オナシスなど著名人が名を連ねました。
日本でも力道山が引退後の愛車として所有し、銀座を走る姿は“成功者の象徴”と映りました。
石原裕次郎は映画『憎いあンちくしょう』(1962年)でロードスターを駆り、
その映像が若者の憧れを決定づけました。
このように300SLは世界的なステイタスシンボルでしたが、価格は極めて高額。
そこで1955年に「より身近なSL」として190SL(W121)が誕生しました。
1955–63年に25,881台が生産され、300SL譲りの意匠で人気を博しました。
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クラフトマンシップが息づくコーチビルド作品
190SLの夢を叶えた「デュッセン バイエルンマイスター」
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オリジナルの190SLとなると、
すでに平均相場は約1,800万円(市場平均約$121,000)。
コンディションの良い個体はさらに高額で取り引きされ、
今や「超ビンテージ」と呼ぶにふさわしい領域にあります。
美しいスタイルに憧れても、現実にはなかなか手の届かない存在になってしまいました。
そこで、190SLの魅力を現代に再現したのが、BMW Z3をベースに作られた
デュッセン バイエルン マイスターです。
2002年に発表されたこのモデルは、FRP製の外装をまとい、
クロームバンパーや流麗なボディラインを忠実に再現。
オリジナル190SLの優雅さと、現代車としての実用性を見事に融合させました。
外観はまさに190SLそのものですが、その中身はBMW Z3。
つまり、現代の動力性能とメンテナンス性を備えた190SLといっても過言ではありません。
しかも仕上がりは単なる「レプリカ」の域を超え、
クラフトマンシップが息づくコーチビルド作品の趣を漂わせています。
外観は190SLそのものですが、その仕上がりは単なるコピーではありません。
デュッセン バイエルン マイスターは、当時のクラシックカーの造形美を尊重しながら、
BMW Z3のプラットフォームに丹念に合わせ込んだもの。
量産車の雰囲気ではなく、
ひとつひとつのパネル造形やクロームパーツの仕上げに
職人の手間と情熱が込められており、
まさに「クラフトマンシップが息づく“コーチビルド作品”」と
呼ぶにふさわしい存在です。
メッキバンパーは、再メッキされて美しく輝いています。
その時、雨水が溜まりやすいバンパーの箇所に水抜き穴を設置してもらったそうです。
これも製作当時のメカニックが担当しているからこそできるワザです。
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オーナーさんのこだわり
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「190SLといえば左ハンドルですから。」
そう語るオーナーさんは、デュッセン バイエルン マイスターを
カスタム製作で依頼する際にも、ベース車両への妥協はありませんでした。
BMW Z3の中でもあえて左ハンドルの3000ccモデルを選んだのは、
オリジナルへの敬意と雰囲気を大切にするためです。
さらにオーナーさんはこうも語ります。
「せっかく190SLを再現するのですから、やはり左ハンドルでなければ気持ちが出ません。
ハンドルを握ったときの景色や雰囲気、その一つひとつが“らしさ”につながります。
私はそこを大事にしたかったのです。」
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整備への安心感
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整備についても、信頼の歴史があります。
「デュッセンバイエルン指定工場のメカニックさんですから、
全面的に信頼して、全てお任せしてきました。」
走行は9万kmあまり入っていますが、
このデュッセンバイエルンを知り尽くした同じメカニックさんが
主治医のように丁寧にメンテナンスを重ねていますから、
機関と足回りはもちろん、FRP外装についても安心して任せています。
製作当初から同じ整備士が主治医として関わり続けている
──旧車にとってこれ以上心強いことはありません。
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BMWシルキー6の魅力
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動力性能においても、この個体は特別です。
搭載されるのは、BMWが誇る自然吸気直列6気筒エンジンM54B30、
通称「シルキー6」。
• 排気量:2996cc
• 出力:231PS/5,900rpm
• トルク:300Nm/3,500rpm
• 0–100km/h加速:約6.0〜6.3秒
• 最高速:約236〜250km/h
オーナーさん曰く、
「高速道路を流していても、自然に回転が伸びていくんです。
気づけばスピードが出ているのに、全くストレスがない。
これがシルキー6の真骨頂だと思います。」
その滑らかさはまさに「シルクのよう」。
ターボ化前の最後の世代を象徴する自然吸気(NA)シルキー6は、
BMWファンにとっても貴重な存在です。
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直近の整備内容
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直近では、エンジンまわりから足回り、電装系まで幅広くメンテナンスが行き届いています。
• シリンダーヘッドカバーボルト交換
• 右ヘッドライトバルブ交換
• ラジエーター関連一式(ロアーホース/アッパーホース/バイパスパイプ)
• 温度センサー交換
• 右テールランプ仕切り板・バックライト電球交換
• プレッシャーバルブ交換
• ベントパイプリターンパイプ交換
• インテークマニホールド・ガスケット交換
• ハイブリッド冷却水交換
• マフラー(加速騒音規制対応品へ交換)
• フロントブレーキパッド交換
• フロントブレーキローター交換
• フロントブレーキ整備一式
• エアコンダストフィルター交換
• エアバッグ警告灯対応
• 電源コード交換
「消耗品はもちろん、冷却系や足回り、電装に至るまで
主治医のメカニックさんに丁寧に見てもらっています。
次のオーナーさんにも安心して楽しんでいただけるはずです。」とオーナーさん。
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仕様
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車名:デュッセン バイエルン Mystar(日本名:マイスター/190SLレプリカ)
ベース:BMW Z3 3.0i
排気量:3000cc 直列6気筒(231PS)
ハンドル:左
オーナー歴:ワンオーナー
走行距離:8万kmあまり
車検:○○年○月まで
整備履歴:製作時指定工場および当時の担当メカニックによる一貫整備
特記事項:FRPボディ/190SL外装精巧再現/ターボ化前夜の自然吸気シルキー6搭載
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相場参考(2025年時点)
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• 300SL ガルウィング:約2億5,000万円(市場平均1.68M USD)
• 300SL ロードスター:約2億円(市場平均1.32M USD)
• 190SL:平均約1,800万円(市場平均$121,000)
※1ドル=150円換算