その当時、FF全盛に後輪駆動を堅持したハチロクは古典的ですらありましたが、それこそが国産としては数少ない軽量FRとしての存在を示すこととなり、四半世紀を過ぎた今でも希代なモデルであるのは、疑わないところでしょう。

今回ご紹介しますハチロクは、リトラクタブルライトを持つトレノの2ドアGT-APEXです。年式は87年ですので、AE86としては最終年式です。
オーナーさんは約2年前に専門ショップに委託販売されていたのを見つけ購入、その際の距離は約56000kmでありました。足回り、ブレーキを中心にモディファイを加えているコンディションです。

まずは外観から、サビが懸念される86ですが、目視の範囲ではほぼ見受けずキレイな状態です。キズが目立つようになったので、昨年末に元色で全塗装を行いました。その際に気づいたサビは処置をしているそうで、その外装は良好です。前オーナー所有時に左フロント部を縁石に当ててしまったため、その際にフレーム修正と強化のためスポット溶接増しを施したと聞いています。サイドステップとリアスポイラーは純正の中古のものを取り付けました。

内装に大きな傷みは見受けず良好です。ただ、部分的に経年によるヤレが散見されます。シートは破れはありませんがバックレストのカバーが浮き始めています。ダッシュも1箇所ヒビが確認できました。天井と内張は問題ありません。ステアリングは変更されており、オリジナルはありません。ワイパー、照明のスイッチとエアコン操作パネルは以前新品交換されているとの事です。メーター照明はLEDになっていました。集中ドアロックが付いています。

エンジンはオリジナルスペックです。マフラーのみフジツボのレガリスに変更されています。点火系はプラグコードを変更、デスビはOHしました。これまでトラブルはなし、よって修理は要しておりません。セルモーターはリビルト品に交換しています。タイベルは平成16年4月　37450kmで交換のラベルが貼付されています。

足回りは購入後にブリッツの車高調を組みました。バネレートはF6kg R4kgの設定だそうです。前オーナー所有時には全ブッシュをTRDのものに交換しているようです。

ブレーキはノーマルからフロントをWILWOODの4ポットのシステムを用いて強化を図りました。リアはスリット入りローターに変更、ホースはステンメッシュにしています。

ホイールはレイズのグラムライツ57Vの15インチに新品交換です。ノーマルはありません。

クラッチとフライホイールは購入時に純正新品に交換されています。

エアコンも問題なく効きます。

現オーナーさんはドリフト等の競技での使用はありません。

ナビ、ETCが付属します。

距離は実走行と見ていますが、記録簿がないため証明はなりません。ただ、歴代オーナーはほとんど乗らずにいたと伝え聞いています。

自動車税の未経過分とリサイクル券(5290円)は清算をお願いいたします。

ハチロクがまだ新車で発売していた頃に、オーナーさんは中古で買って乗っていたそうです。そこから年を経てその乗り味は今はどう映るのか、それが購入のきっかけのようでした。手にしてあらためて感じた事は、当時はそれほど感じなかったものの、やはりボディのコンパクトさは現代のクルマとは明らかな差があり、1トンを切る車重も懐かしく思えるもののようです。そこから生まれる軽快感は、それほどパワーがなくとも十分に楽しめるのを再認識させられるものですが、それでも現代の技術はしっかり取り入れているところでは、当時とはまたひと味違う乗り味を体感した模様です。例えば車高調、当時はガチガチに固め、乗り心地もいとわないと言う状況もありましたが、それも昔の話のごとく今や十分なストロークを確保し、それほど乗り心地を犠牲にせずとも足回りのセッティングが行える辺りは、進化を感じるところのようです。実際にその乗り味を助手席で試してみましたが、固めた足ながらも突き上げる感じはほとんどありませんでした。段差も気にせず、スムースに回るエンジンとで街中でもハチロクの軽快感が楽しめそうです。ボディも大変にしっかりしている印象で、きしみ音もなく、それはスポット増しが効いているのではないかとの推測です。今回は車庫整理を伴うようになり、売却の運びとなりました。今や少ないコンパクトFRの走りを求める方には、ハチロクの乗り味は懐かしくも新鮮に映る事でありましょう。

実車は埼玉県加須市にあります。