通称エスロクのクーペです。
当時ホンダの技術を結集した高回転高出力エンジンを搭載したオープンスポーツは、S360の構想から始まり、S500、S600、S800へと進化を果たします。 S500の後継たるS600は64年に発表され4連キャブレターを備えたDOHCエンジンはそのままにトルクの細さを補うべく排気量を600ccに拡大したハイチューンエンジンを搭載、ドライブトレーンなどはS500を踏襲しています。
ご紹介のエスロクは鋼板の屋根を持つクーペです。
当時のクーペの目的はビジネスユースとなっている辺りはユニークですが、ラゲッジスペースがオープンに比べ非常に広くなっているなっているのは乗用車としての実用性は高まっています。
オーナーさんは4年程前、レストアベースとして購入されます。 現在は抹消登録済みで、目的であったレストアは未だ果たせぬまま車庫に保管されています。
ベースとしてのコンディションは良好と判断できるでしょう。
外装では左Fフェンダー下にサビ浮きからきたような塗装の割れが目立つ傷みで、それ以外は大きなサビや腐りもなく、またジャッキポイントなどもしっかりしているのが見て取れます。 ボンネットやトランク、ドアなどの水が溜まりサビやすい箇所を見ても、腐りなどの傷みは見られません。
塗装はおそらくオリジナルではないか、との事ですが、詳細は明らかではありません。 所々に塗装のヤレやキズ、サビ浮きは見受けられますが、メッキパーツにもサビはさほど見られませんので、ここから仕上げるには全体的にはしっかりした印象を受けました。 確認できた欠品パーツはフロントエンブレムですが、その他にも細かなものがあるかも知れません。
内装はシートに汚れやヤレが感じられるものの破れはありません。 ドア内張りも同様です。
フロアは運転席、助手席とも大きなサビや腐りは確認出来ませんでした。 またダッシュや天井も汚れはありますが傷みは少ない状態です。 ステアリングはオリジナルですが、割れや欠けがありました。 またシフトノブはオリジナルから変更されています。
エンジンは購入時に調整したそうで、何ら不具合はなかったそうです。 取材時にもエンジンを掛けていただきましたが、始動性もよく、アイドリングは高めながらも安定はしていました。 ただしばらく動かしていないため、調整や整備は必要と思われます。
タイヤも動かしていない状況から見ると要交換です。 ホイールキャップは4本オリジナルです。
オーナーさんは他にエスロクのオープンもお持ちで、ラインナップさせようとこのクーペを選択しました。 オープンはキッチリと仕上げたものの、こちらのクーペは手をかけてあげられず、ガレージに保管した状態が続いています。 旧車を複数台お持ちであるのと時間の関係でレストアを断念、今回売却の運びとなりました。 独特なスタイリングを持つエスロクのクーペ、どなたか甦らせ下さい。
実車は群馬県中之条町にあります。